満員電車の中、女子中学生は胸苦しいほどの混沌に包まれていた。狭い空間に押し込められた体が息苦しく、窮屈さが心を刺激する。

彼女は目を閉じることで外界から逃れようと試みた。しかし、密集した人々の身体温度や咳払い音など、不快感を増幅させる要素は消え去らなかった。むしろ、ますます強く感じ取るのだ。

そしてそんな不快な状況下で起こりうる最悪の事態が彼女に訪れた。おならが出そうになってしまったのだ。初めは必死で我慢して耐えてみせようと固く口を結んだままでいられたが、限界点へ迫ってきていることを自覚した。

思考回路が混乱してゆく中、「すかしっ屁」――その小さな巧妙さに望みを見出した彼女は一策を案じ始める。「もしかしたらこれでごまかせば…」と期待する気持ちも手伝って漠然と思考する。

勇気を振り絞りながら、彼女は静かに息を吸い込んだ。そして少しだけ腹筋を緊張させることで、音を抑えようと試みた。しかし、その努力も虚しいものであり、結果的にはっきりとした音が響き渡ってしまった。

周囲の人々は一斉に視線を向ける。彼女の顔は真っ赤に染まり、耳まで燃え上がる恥ずかしさが身体中に広がっていく。

次の停車駅までの時間は長く感じられた。時計の針が進む度に、「どうしてこんな目立つ場面に巻き込まれなければならなかったんだろう」という自問自答しか頭から離れず、胸中は深い屈辱感で満ち溢れていった。

やっと到着した停車駅では人々が流れ出す中、彼女だけ足取りを重くして降り立つ。その際、通路席から遠ざかる様子もまた心情表現そのものだろう。

振返って思う。「あの時何故我慢しなかったんだろう」と後悔の念が込み上げる。しかし、経験から学んだ教訓もまた未来へと繋がり、彼女は次回に向けて心を引き締めた。

満員電車の中で遭遇した恥辱――それは彼女にとって大人になる一歩でもあったのかもしれない。